なんだかんだで、もはや「アクセス解析」といえばGoogle AnalyticsかAdobe Analytics(旧SiteCatalyst)の二者択一になりつつある昨今の国内アクセス解析事情。
で、AdobeとGoogle、どっちが優秀なの?
というとこが結構ブラックボックス。というか、人によって意見が違ったりもすると思います。じゃあ比較してみよう。というのが本文の趣旨です。
とは言え、ただの機能比較だと面白くないので、本内容はあくまで事業者側(ツールユーザー側として)の独断と偏見と経験に基づいて記載させていただこうと思います。そのため、「これが絶対に正しい!」ということではなく、人によっては観点も評価軸も異なるだろう、という前提でお願いします。
では。
【指向性の違い】
まず、大きな差として表れているのが、ツールとしての指向性になると思います。
GoogleAnalyticsが主に管理画面上での設定によってカスタマイズを加えていくタイプである一方、Adobe Analyticsはサイトに埋めたJavaScriptのカスタマイズによってデータを定義・取得していくタイプになります。
そのため、まずAdobeに関しては「JavaScriptを使ってカスタマイズする」という技術要素がハードルになります。とは言え、GoogleもECサイトなどではある程度JSをカスタマイズする必要があるので、結局自社で対応しきれない分は外部のコンサルタント等に依頼する必要が生じます。
ノンカスタマイズ状態でAdobeを使うよりも、GAを使った方が圧倒的に良いのは確かです。「とりあえずタグ入れとけば良いか」では通用しないわけです。
最近の機能拡張を見ると、AdobeもGoogleの指向に徐々に近付いている様が伺えます。例えば”分類ルールビルダー”や”Processing Rule”、”DB Vista”といったサーバサイドでの設定でデータを取得・加工する方式も可能になっています。
正直、どちらが良いか、というのはなかなか判断が難しいのですが、ユーザーからしてみれば「楽になればなるほど良い」ので、両社には引き続き頑張っていただきたいです。
【レポートの見やすさ】
「見やすさ」だけをとると、これはGoogleに軍配が上がります。Googleが「使いやすい」と言われる所以がこのあたりになると思います。
Googleの方が「集客→回遊→コンバージョン」というウェブ分析の基本型に準じて作られているため、メニュー構成として的確ですし、操作性も非常に良いです。基本的なレポートが簡単に見られることは当然、カスタムレポートやセグメントを使えば、かなり複雑な設定もできます。
またAdwordsやウェブマスターツールとの連携も容易にできるため、そういった便利さもレポートの見やすさ、使いやすさにつながっていると思います。
そんなこんなで、簡単に評価すると、
GAは「初心者には取っ付き易いし、上級者にとってもある程度かゆい所に 手が届く」ツール
だと思います。
ただ、上記、「上級者にとっても“ある程度”かゆい所に〜」と、若干歯切れの悪い感じにしたのにも理由があります。この辺は後述します。
一方でAdobeですが、こちらはまぁ、初心者にとっては使いにくいです。レポート数が多すぎて、どれから見たら分からない、という部分で拒絶反応が出ます。
↓こんなの。
一応レポートメニューをユーザ毎にカスタマイズする機能もあるのですが、規模の大きい会社だと管理するだけでシンドイし、人によって見てるメニューが違うと共通認識で話ができないという弊害もあるので、弊社では一切使ってないです。
ただ、そんな「使いづらい」イメージのAdobeですが、それはあくまで初心者レベルの話です。なんだかんだで使い初めて、どのレポートがどういう意味合いなのかさえ抑えられてしまえば、むしろGoogleよりも使い勝手の良いツールになる、というのが個人的な所感ではあります。
Adobeの方が、カスタム項目やイベント指標の一覧性が確保されており、指標も独自の計算式を組んで使える点で、使いこなすとGoogleより楽です。
そして、上記の”一覧性”や”独自指標”という点が、「レポート」というよりも「分析」の面でより有益性を発揮してくれます。この辺は後述します。
また、そもそもPVなりUUなりCVなりというベーシックなものは、ツールにアクセスして見ること自体がナンセンスで、さっさと定期配信なりExcel自動アップデートなりで対応してしまうのが正だと思います。その辺りの使い勝手も、オフィシャルなアドインツールが提供されていたりするので、中級・上級者の分析担当にとってはむしろ使い勝手が良い、というのが所感になります。
【分析力】
正直、この点がGAの劣る第一のポイントだと思います。
Google Analyticsは先述の通り、セグメントを駆使すれば様々な観点でデータを見ることができます。例えば[新規来訪ユーザーor再訪ユーザー]とか、[商品購入者or非購入者]とか。これはこれで、非常に有益な情報だと思いますし、素晴らしい使い勝手だと思います。
ただ、あくまで個人的な感想ですが、どれだけセグメント毎に比較していこうとも、「あぁ、セグメント毎に見ていくとこういう違いがあるんだ、へぇ〜」で終わってしまうことが多いです。
なぜならば、GAはセグメント無しの状態だと、「レポーティング」を超える(つまりウェブデータの可視化以上の)ことができないからです。
なんだかんだで、GoogleAnalyticsではウェブ分析のメソッドがあまり確立されていない、という部分があります。それは計算指標が使えないことや、カスタマイズ性に乏しい点などの影響しているのだと思います。上述のとおり、ツール自体の指向性が管理画面上からのカスタマイズであるため、JavaScriptカスタマイズでの柔軟なカスタマイズ性と比べると、かなり制限がかかってしまいます。当然GAでもJSをカスタマイズして独自のデータを取得することは可能ですが、これまでにそういった文化が醸成されていないがゆえに、柔軟かつビジネスモデルに即した的確なデータ取得文化が未成熟だと感じています。そういった背景を基にした結果、結局GAでは発展性が乏しく、分析メソッドが成熟していないし、実現方法が用意しきれていない、という課題があるのだと思います。あくまで私見です。ごめんなさい。
一方で、Adobeについては元々ビジネス指標に基づいた計測設計を行い、それをJavaScriptのカスタマイズで計測していく、というアプローチが定着しています。それらの経験則に基づいてか、マーチャンダイズ機能(売り場分析)や、商品発見方法分析、ページパフォーマンス分析等々、GAでは実現できないメソッドと、ツール自体の機能が既に確立されています。(細かい内容は面倒なので書きませんが。)
以上のような事柄もあり、分析から課題点などを発見する、という点での機能性についてはAdobe Analyticsに軍配が上がると思います。
また、AdobeについてはAdHocAnalytics(旧Discover)というJAVAベースのウェブ分析用BI的なツールも提供されています。簡単に言えば、SiteCatalystの上位ツールです。ここまで踏み込むと、分析面でGAには勝ち目がほぼ無いです。(Big Queryを使えば対抗できるのかもしれないですが。)
【改善力】
これはあくまで補足ですが、決定的にGoogleが劣る点が「改善力」だと思います。
これは、GAとAAとの比較というより、テストツール系も含めた大系的なお話になるので、本記事内では簡単に済ませます。Googleウェブテスト(GWT)とAdobe Target(旧Test&Target)の比較です。
GWTについては、いまだにページをテストパターン分用意して、アップする形です。この場合に、問題になるのが、1ページ上の複数ヶ所を同時にテストする(つまり多変量テストの)際に、ページのボリュームが掛け算で増えていきます。こういった管理上のコストが結構厄介です。
また、ほぼ同一内容のページが複数枚あるということは、その対象ページ上に記載してあるキャンペーン等の概要が変わった場合、全ページ差し替えを行う必要が生じます。この時に、もしテストパターンのページの内容変更が漏れた場合、業務上の問題が生じる可能性もはらみます。
また、GWTにはターゲティングの機能がありません。結果分析時にはGAのデータをそのままセグメントに使えるという点は非常にすぐれているものの、それをターゲティングルールに使えないというのが発展性に欠ける部分だと思います。
【総評】
どっちが優れているか、というところで言えば、正直断定することは難しいですが、個人的な感想としては、Adobeに優位性があると思います。
なぜならば、アクセス解析ツールはあくまで改善に結びつくデータを引き出せてこそ意味のあるものだ、と思うからです。
これまでに記載【レポートの見やすさ】と【分析力】の観点から、
GAは「モニタリングツールとして優秀」だけど「課題への当たりが付けにく い」ツールと感じています。
そのため、は初心者に優しく、上級者にとっても使えるツールではあるものの、中級者向けではないという気がしています。
セグメントはデフォルトで用意されているものも多いですが、それ以上を求めるとかなり骨が折れる側面があります。カスタムレポートやフィルタ、セグメント設計を駆使して課題を発見するには、なかなかハードルがかなり
加えて、【分析】の項でも書いたとおり、課題発見に対する方法論が乏しく、改善に結びつけづらいと感じられます。分析要件が複雑化してくると対応しきれないというか、おそらく
Adwordsやウェブマスターツールとの連携も、良いのは良いのだけど、結局
そのため、大規模サイトである程度全体の底上げ(初心者から中級
一方でAdobeは初心者には冷たいけど、一旦中級まで行ってしまえば、改善へのドライブが早い気がします。【分析力】の項でも記載したように、一度自社内での分析メソッドを確立し、そのベースさえ固めてしまえれば、改善ポイントへの道筋はウェブ分析のスペシャリストでなくてもある程度立てられるようになります。また、ここが問題なんじゃないか、という気付きがあればデータに対する「解釈」が入る余地が出て、仮説を持った施策に取り組むことができるようになります。
つまるところ、
Adobeは「モニタリングツールとしては取っ付きにくい」が、「課題への当たりが付けられ、仮説に基づいた施策に移しやすい」ツール
だと言えると思います。
そのため、初心者よりも、中級者や上級者へと成長していくことができるツール、ということも思っています。
以上のような所感なのですが、最後にこの違いが何を意味するか、という点を軽く書きます。
「データドリブンな組織」というのは、今や多くの企業が目指すところだと思います。データドリブンな組織を作るためには何が必要か。それは当然ツールではなく、「人材」だと思います。データから仮説を導ける人材が多いほど、データに基づいた改善活動は活発化します。
じゃあ、データドリブンな人材を増やすためにはどうすれば良いか。それには人材育成の仕組みが必要になります。そのため、GAのように一部の上級者と多数の初心者を作れるツールよりも、少しでも多くの中級者〜上級者を作り上げていく土台としてAdobe Analyticsを使う、というのは理に叶ったお話なのではないかというのが僕の思うGAとAdobeの大きな差です。
結局、会社としてどういうウェブ戦略を立てていくか、ということに由来するのですが、基本的に「ウェブには力を入れない」のであればGoogle Analyticsで全然事足ります。しかし、ウェブの分析〜改善を通して収益を増やしていくことを考えると、その選択肢は無いのではないか、と。
以上のことから、個人的に、というかうちの会社としてはAdobe Analyticsの方が優勢だと考えている、ということです。
おわり。(長かった・・・。)