タグマネジメントツールの比較

※本文、一個人として分かる範囲で調査した結果およびそれに基づく私見で構成されております。なので、本稿を鵜呑みにしないでいただき、あくまで参考情報として捉えていただけると助かります。

(以下、本文。)

 

昨年より盛り上がり、今年に入って多くのサイトが導入しているタグマネジメントツール。

Google TagManagerや、BrghtTagの技術を用いたYahoo! TagManager(YTM)を始め、EventHandlerをトリガーとしてアクションが起こせたり、DOMやCookieなどの要素を条件として利用できるなど、非常に柔軟性が高く、高度な設定が可能なタグマネジメントツールが増えてきた。と同時に、やはりこれまでの某なんちゃらタグなりなんなりといった、広告タグのみを専門に扱うタグマネジメントは機能面ではもはや太刀打ちできないことが自明と思える。(ただ、広告タグのみを管理するツールとしては必要十分なので、それはそれで良いとも思う。)

で、この高度化したタグマネジメントツール、特にGTMとYTM。そして、もはや機能的には最高峰と言えるAdobe Dynamic TagManagement(元Satelite)。この三つのうち、どれ使いますか?っていうのがなかなかの悩みどころだったりします。

ということで、とりあえず比較してみました、と。

比較します。(ただし、あくまで一個人として利用した所感ですので、責任は負いかねます。)

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【Google Tag Manager】

《利用条件》

  • 特に無し。タグマネージャー申込み画面から申込み。

《メリット》

  • タグ発火条件に指定できるEvent Handlerは3ツール中最も少ないが、必要最低限に絞られており、迷うこともなく適切だと思われる。
  • Google Analyticsとの連携は最もやりやすく、リマーケタグやコンバージョンタグの設定も可能なため、Googleメインの広告主に相性が良い。
  • DFAやClickTaleとも公式に連携可能。
  • ヘルプが充実しているため、自力でもなんとか使える。
  • バージョン管理、権限設定、パブリッシュ等のマネジメント機能も備えられている。

《デメリット》

  • 正直、これといった欠点が無い。
  • 強いて挙げるならば、サードパーティのツール(アクセス解析・ABテスト/ターゲティング・ヒートマップ等々)を組み合わせた高度な連携をする場合に力不足かもしれない。

《総評》

  • 今回比較する三つの製品中、最も使いやすく穴が無い。
  • Google Analyticsをメインで利用していて、広告もGoogleメインならばコレで良いと思う。
  • デメリットにも書いたが、高度なことをしない限りはこれで事足りる。

 

【Yahoo! Tag Manager】

《利用条件》

  •  Yahoo(リスティング or YDN)に広告を出稿していること。(なので利用ハードル自体は低い。)

《メリット》

  • サードパーティの連携タグの多さと、サーバ間通信で直接データを受渡してくれる方式は、サイトの表示高速化に極めて有効。使う上での最大のメリットがこれ。
  • 設定したタグの読み込み順序がインターフェイス上で確認しやすい。
  • YTM自体の読み込み速度は3つのツール中最速。(私が確認した範囲では。)
  • YahooがBrightTagのDMPを利用することが表明したので、DMP連携、YDNへの出稿が優先度高いならばメリットあるかも。
  • タグ発火条件に指定できるEvent Handlerが豊富。

《デメリット》

  • Yahooアクセス解析と強制連携されるので、使うと勝手にオーディエンス(匿名)データとして自社サイトのデータが吸い上げられるあたり、非常に気持ちが悪い。(2013/11/29訂正:強制連携ではなく、Yahooアクセス解析もONにすると自動的に連携されるが、後で解除できる。)
  • 最大のメリットであるサーバダイレクト方式も、現状では対応してるタグが少ないので、正直あまり使えない・・・。
  • 公式ヘルプが無い(2013/11/29訂正)の内容が薄いので、使い方が分からない()。
  • Event HandlerやData Elementの指定の仕方が独特(というか、詳しいヘルプが無いので全然分からない)で、jQueryやCSSを理解できない人にとっては操作が困難。
  • 私が見た限り、権限設定(閲覧権限・編集権限・本番承認権限など)ができないため、代理店と広告主間での共用(責任範囲の切り分け)ができない。
  • テスト環境と本番環境での切り分けができない。(2013/11/29加筆:パラメータを付けて切り分ける等のやり様はあるが、若干微妙)
  • 見る限りバージョン管理機能が無いので、設定ミスった時に大変。
  • アカウントが広告代理店に紐付き、広告代理店切り替えの際にアカウント設定が引き継げないのが正直致命的な気がする。(2013/11/29加筆)

《総評》

  • 正直、使ってみて最も戸惑ったのがこれ。サポートおよびヘルプがしっかり整備されない限り、使いこなすのは困難だと思う。
  • サポートは基本的に利用している広告代理店が実施。Yahoo側でも月額数万円でのサポートプランやコンサルティングメニューが用意されているものの、利用を考えると少々コスト見合い的に疑問が出てくる。(2013/11/29加筆)
  • 今後自社で採用する可能性があるとすれば、やはり鍵はサーバダイレクト方式がどこまで拡充されるか。多くのタグ(特に広告タグ)が対応すればメリットは大きいが、現状ではその辺りの先行きが示されていないこともあり、利用するにはまだ早いかもしれない。

 

【Adobe DynamicTagManagement】

《利用条件》

  • Adobe Marketing Cloud利用。(この時点でもはや利用者が限定されるけど)

《メリット》

  • 他ツールと比較にならない圧巻の高機能っぷり。(これ単体で10万円/月と言われても「安い!」と思えるレベル。)
  • Adobe Marketing Cloudの各製品との連携に加え、Google Analyticsとも容易に連携が可能。
  • タグ発火タイミングが、ページ上部・ページ下部・DOM Ready・onloadの四パターンで指定可能なため、発火タイミング調整がしやすい。
  • タグ発火条件に指定できるEvent Handlerが豊富。HTML5にも対応し、動画やスマートフォン特有のイベントにも対応している。
  • 条件指定に利用出来る項目が豊富(DOMやCookie、通算訪問回数や遷移ページ数等々なんでもあり)な上、一度取得した情報を管理画面上でCookieに保持(ページ/セッション/ユーザーレベルで指定可能)させられるので、カスタマイズが少し楽になる。
  • 同期/非同期の指定と順序設定も慣れると分かりやすくて簡単。
  • 配信されるタグの読み込みのタイムアウトが設定できるため、一部のタグ読み込みに支障が出た際にも安全(多分)。
  • 基本のJSファイルはAWSに置かれてそこで更新されるが、FTPで自社サーバにアップデートした情報を流しこむことも可能。
  • コンテナ毎にタグ付けができるので、管理もしやすい。
  • テスト/本番環境の切り分けができる。
  • バージョン管理、権限設定、パブリッシュ等のマネジメント機能も備えられており、GTMよりも柔軟な設定ができる。

《デメリット》

  • 高機能ゆえ、正直難しい部分も多い。
  • SiteCatalystの変数の利用方法を理解している必要がある。
  • 広告リマーケタグ周りを設定する際に、Adobeにも精通している会社でないとサポートが難しい可能性が高い。
  • 現時点ではアメリカのAWSまで大元のJSを取りに行っているようなので、レスポンスが非常に悪い。(が、近日中には日本対応もちゃんとされて早くなるらしい。)

《総評》

  • 機能面では抜群に良く、現状確認する限り最高のタグマネジメントツール。
  • 慣れるまではしんどいが、慣れてしまえば使い勝手は抜群に良い。
  • サードパーティツールとの連携も組みやすいので、多くのマーケティングツールを併用している企業にとっては有益。
  • 管理画面上のエディタでJavaScriptを書くと、その中の変数がローカル変数になるので、諸々の利便性(サードパーティツール連携など)を考えるとAdobeマーケティングスイートの一部として実装していくよりも、「高度なタグマネジメントツール」という観点で利用する方が是だと思う。

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ということで。

総合的に見ると、やはりAdobeのタグマネジメントツールが抜群に素晴らしいし、Adobeユーザーならば迷うこと無く採用すべきツールだと思う。(レスポンスが改善されたら。)

とは言え、やはりタグマネジメントツールの選定のポイントは、機能面というよりも「誰が運用するのか」というところが最優先される事項というのも事実。どれだけ高度でも、運用する人間がJavaScriptやCSSなどを理解していなければ、おそらく使いこなせない。代理店等に運用を任せるにしても、技術レベルが一定以上ある代理店でなければいけなかったりもする。

などなどを考慮していくと、やっぱり自社の運用に適した形を最初に考えるべきなんだろうなぁ、と思う次第であります。

あと、GTMは分析系ツール用、YTMは広告タグ用、みたいな併用も全然ありだと思います。