キリンレモン、90周年のプロモーション施策がなかなかに秀逸で、久々に震えた。
ターゲット
キリンレモンのメインターゲット層はおそらく10代の中高生だろう。その中高生からの支持を受け、今最も旬だと言えるアイドルグループBiSHを起用した点は、今考えうる限りでの最適手だと思う。
10代中高生はもちろんのこと、今回の楽曲・MVともにクオリティが非常に高いがゆえ、少なくともBiSHファンにとってのキリンレモンへの好意度は超インフレってるのは間違いない。
ブランド資産の活用
「キリン♪レモン♪」という、誰もが一度どころか何度も何度も聞いたことがあるあのフレーズ。そこをフックにしてのオリジナル楽曲描き下ろし、しかもクオリティが高い!アイドルながらもメンバー個々の声質に明確な特徴があり、歌唱力のレベルも高いBiSHを起用した妙がここにも感じられる。加えてMVも良い。
二作目のフレデリックについては、正直僕がフレデリック嫌いっていうか、大したことねーな、って思ってるのであまり惹かれないのだけど。商業用のオリジナル楽曲としては悪くない出来になっていると思う。
本当ならば二本目に、これまた10代20代からの支持を受けるSHISHAMOあたりをアサインできれば、言うこと無しだったと思う。
いずれにせよ、誰もが記憶しているフレーズを軸に、オリジナル楽曲を仕掛けるという、なかなかの飛び道具を実現させた広告代理店を褒めざるをえない。
プロモーション手法
今の時流に合わせて、動画というフォーマットを選択したこと。逆に言うと、今だからこそできるプロモーション手法を実践したこと。しかも奇をてらうではなく、正攻法での動画プロモーション。10年後の100周年ではもはや時代遅れになりかねない、今だからこそ実施して意味のある施策だと思う。
ただ、やっぱり露出量というか、再生回数が少なすぎるとも思う。彼女たちの楽曲のOfficial Videoの再生数が300万を超える中、今段階のBiSHのキリンレモンMVで150万再生というのは、若干寂しさを感じる。
コンテンツは良いのに、バイラルの仕掛けが足りてない。事実、うちの社内で話題にした際、ターゲット層からズレるというのはあるものの、誰もこのプロモーションを知らなかったという事実からみても、もっとバイラルに金と策をかけるべきだったと思う。
まあそこは予算との兼ね合いですよね、っていうのはわかってる。しょうがない。
理想を語るならば
90年という歴史を持つキリンレモン。多分、一生に一度は誰もが口にしたことのある炭酸飲料。ただ、おそらく歳を重ねるごとに飲む機会もどんどん減っていく飲料だとも思う。だからこそ、今回のアーティストアサインにもうひと工夫加えて、30-40代、50-60代のノスタルジーを掻き立てるようなアーティストを起用してほしかった。第四段の友近・椿鬼奴・しずちゃんの動画は、完全にコメディで、正直そこらに転がっている「芸能人使ってウェブ広告やってみました」レベルのクオリティになっているので、結構寒い。そこはバリエーションよりもブランドとしての一貫性出していけよ!っていうのが外野の意見である。
例えば第四段が30-40代ターゲットにして、橋本絵莉子(元チャットモンチー)とかEvery Little Thingとか、絶対無理だろうけど小沢健二あたりを使えてたら。第五段に50-60代ターゲットに松田聖子とか?が来てたら、90周年という歴史を辿りつつ一貫したブランドの世界観が出せてたのではなかろうか、と。まあ、そんなことしたら、数年分のプロモーション予算がぶっ飛びそうな気がするし、現実味ゼロなのはわかってる。
最後に
ということで、キリンレモンのプロモーションはとても秀逸だと思う。こんなにちゃんとしたプロモーションプランを実行できる大企業、羨ましい・・・って思う。
一方で、その後に生じた「午後の紅茶」のプロモーション炎上はなんだったのか、と。ブランド毎に担当は違うのだろうけど、完全に午後の紅茶の炎上はキリンレモンの施策に水差した感、あるよね。明暗くっきり分かれたなー、と。