通称「赤R」と呼ばれる会社のウェブサイトから、某デジタルマーケティングソリューションベンダーの計測タグがなくなった、という噂を聞いたので、見に行ってみたら本当に無くなっていた。
背景はわからないけれど、まあ時代の流れとしては正しい気がしているので、思ったことを一筆書かせてもらおうと。
※ちなみに、ECサイトからはなくなったけれど、グループの別事業サイトではまだタグは生きてるようだったので、全社的な終了か否かは知らぬ。
■ウェブ解析の時代は終わった
赤Rといえば、有料アクセス解析ツールの超VIPクライアントとして有名であったわけだけど、逆にこれまでよく使い続けてきたな、という気もしている。この流れに乗って、青い方のRも解約するんじゃないかな、って気すらしている。
昨今のビッグデータ云々の流れもあってか、ウェブ解析ツールの市場価値は大きく下がっている、と個人的には思っている。
実際、僕も昔は毎日のようにツールにログインしては数字を追い、データ分析をしていた。けれど最近では、業務が多少変わっていってはいるものの、ウェブ解析ツールにログインすることはもはや稀で、週に1度ログインすれば良いほどだ。自前のメディア運用をしていて、一定のKPIを追っている身であることには一切変わらないのに。
では今現在、僕が何で数字を見ているかと言えば、全て自社のBIツールで見ている。そのBIツールにはウェブアクセスのデータもあれば、その他諸々のデータも一元管理できる状態でデータが突っ込んである。だからわざわざウェブ解析ツールにログインしてデータを見ることは無くなっている。
今更言うことではないけれど、ウェブ解析ツールというのは「ただのウェブデータ入れる箱」であり、クラウドストレージの金額が安価になってデータの高速処理が可能になっている時点で、専用のウェブ解析ツールを使う必要性が薄れている、というのは自明であったりする。特に大量のトラフィックを持つ大規模サイトほど、数字が丸まってビジュアライズされてしまう解析ツールの価値は薄れる。
■ウェブデータ分析の潮流は2つに分岐していると思う
昨今思うに、ウェブデータを分析する方法は2つに分岐しているように思っている。
1つが、高度な統計解析やクラスタリングを行う、いわゆるビッグデータってやつ。もう1つが、UI/UXの分析・改善ってやつ。
1. 高度な統計解析
最初のビッグデータ解析においては、当然のごとくアクセス解析ツールのインターフェースは不要になってくる。Adobe Analyticsならば、データ全部を自社管理のDWHにフィードして統計解析することになるし、Google AnalyticsならBigqueryに投げる。ていうか、そういう方法取るんだったら、最初から自前のサーバにデータ入れといた方が良いじゃん、っていう話になったりもする。なので、アクセス解析ツールはいらなくなる。これが必然的な流れ。
自前のDWHにデータがあるのならば、そのままTableauなり何なりに繋いでしまえば、ビジュアライズは容易だ。だからGAにログインする必要もない。ゆえにもはやアクセス解析ツールはお役御免である。
専用ツールの重要な機能である「パス分析」機能も、昨今のマルチチャネル化によって必要性が薄れつつある、ということも相まって。
2. UI/UXの分析・改善
UI/UXの分析改善にあたっては、そもそもAdobeやGoogleのようなツールが不向きなのは自明だろう。その分野においては、Clicktaleのようなヒートマップツールの方が圧倒的に向いているし、Clicktaleの技術改善速度も非常に早いのでどんどん使い勝手がよくなっているわけで。
同時に、大規模サイトほどUI設計は非常に難しくなる。特にサイトのトップページのように、多様な目的の訪問者が来るページにおいては、ABテストなどをしようとも無益だったりする。となると、改善活動の価値が薄い一方で大量のトラフィックで従量課金制のクラウドソリューションを食いつぶすようなことは、会社にとっては浪費でしかない。
そんなことを考えいくと、そりゃまあアクセス解析ツールとかいらない、って結論になりますわな、って個人的には思うのです。
■あと数年で消える仕事
1年ちょっと前に、以下の記事を書いたことがある。
これは今読んでも本質を捉えていて、自分で読んでもなかなか的を射た内容だな、と思ったりするわけですけれども。
あと数年で消える仕事が2つあると思っている。というか、正確に言うと「消えてほしい」仕事なんだけど。
1つ目が今回の主題でもある「アクセス解析屋さん」。2つ目が「ウェブ広告の運用屋さん」です。
1つ目は今回書いた、ツール価値の低下という内容がそのまま「アクセス解析屋さん」の価値低下につながることを意味している。2つ目が無くなってほしい理由は単純に、「無駄だから」である。労働力の無駄遣いだし、多くの従事者の時間を無駄にしていると思うから。
この辺は今度、「ウェブ広告代理店の不毛」とかっつって盛大に書いてやろうと思う。想像するだけで長文になること間違いなし、なので。
で、ここで言いたいことに戻る。1つ目の話。ウェブ分析不要、っていう。
誤解無きようにお伝えしておくと、「ウェブの分析は不要」っていう話ではない。
あくまで僕が言いたいことは、「すでに専門性が高まっているので、中途半端にウェブの分析できます!ってだけじゃ今後食いっぱぐれるぜ!」っていうことである。
多分世の中にはまだまだウェブデータのレポーティングとかを生業にしてる人が結構いると思う。けどそういう職種でのんびりしてると、多分もうすぐ失職することになる。デジタルマーケティング市場は需要過多な一方で、必要とされる人材は実はウェブ特化型ではない。重ねて言うけど、ウェブ広告代理店で広告運用・レポーティングをしてる人はさらにやばい。もう実はとっくに不要人材化している。
ウェブ分析系の人はさっさと、先に言った「高度な分析者」か「UI/UXの専門家」にならないと死ぬ。入り口はウェブ分析で良いかもしれないけれど、2年後を見越して早く動いておかないと、本当に価値がない。広告系の人はどっちの道も遠い。高度な分析は広告配信プラットフォームが代行するだろうし、3rdパーティーの管理ツールがそれを代行してくれるだろう。一方でUI/UXの観点でいうと、広告プランナーとかコミュニケーションプランナーとか、そういう分野になるのだろうけれど、ぶっちゃけその道のり、険しくない?って思うからやばいと思っている。
そんなことを思った今日このごろ。
最近、電通デジタルがセプテーニとかに出資する流れも、実はそういうキャリア先細り系の職種を、外に出そうとしている徴候なのかもしれない。
ってな具合で煽ってみる。