私はヒートマップツールが好きです。こと、ABテストツールとヒートマップツールの組み合わせは、ウェブの改善において最強だと思っています。おそらく、この組み合わせ以上に訪問者のインサイトに迫れる方法は無いのではないか、というぐらい素晴らしい。
ABテストツールとヒートマップツールを組み合わせると?
個人的には、自社の画面をガッツリご紹介したいところながら、それをやると自社バレするのでできず・・・。なので、適当な商材のLPを例に。
例えば、以下のような構図の、縦に長いランディングページがあると仮定します。
<html>——————————-
1:ファーストビュー「お得さを訴求」
——————————-
2:概要
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3:金額(シミュレーション)
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4:お得なキャンペーン情報
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5:申込みプロセス
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6:申込みボタン
——————————-</html>
みたいな感じで。
で、こういったページでヒートマップをかけてみると、やはり赤くなる(よくマウスが当たっている)ポイントはページ上部の「概要」や「金額」の部分になることが多いと思います。
さて、ここでABテストツールを使って、ファーストビューの訴求を変えてみます。デフォルトのファーストビューでは、上述のとおり「お得さ」を打ち出した訴求になっていますが、そのファーストビューのBパターンとして「キャンペーンの魅力」を打ち出したものをセットしてみました。つまり、「4:お得なキャンペーン情報」に記載される内容をファーストビューで打ち出すパターンを見せてみたわけです。
するとどうなったか。
【Aパターン】※暖色系の方がヒートマップ上よく見られている箇所、寒色はスルーされる箇所。
<html>——————————-
1:ファーストビュー「お得さを訴求」
——————————-
2:概要
——————————-
3:金額(シミュレーション)
——————————-
4:お得なキャンペーン情報
——————————-
5:申込みプロセス
——————————-
6:申込みボタン
——————————-</html>
【Bパターン】※暖色系の方がヒートマップ上よく見られている箇所、寒色はスルーされる箇所。
<html>——————————-
1:ファーストビュー「キャンペーンの魅力を訴求」
——————————-
2:概要
——————————-
3:金額(シミュレーション)
——————————-
4:お得なキャンペーン情報
——————————-
5:申込みプロセス
——————————-
6:申込みボタン
——————————-</html>
少々見づらくて申し訳ないのですが、上記のようにファーストビューの訴求を変えることで、ページのその他の要素は全然変更していないのに、ヒートマップの掛かり方が大きく変わってきたのです。
つまり、
- Aパターンだと「3:金額」がよく見られ、「4:お得なキャンペーン情報」は見過ごされていたが、
- Bパターンだと「4:お得なキャンペーン情報」が「3:金額」よりもよく見られるようになった。
という状態になりました。また、併せてCVRにも若干Bパターンの方が上昇するという傾向もありました。
ファーストビューが訪問者の関心事を規定する?
この現象は個人的にとても興味深く、面白いと感じました。
この結果から考えられることは、これまで多数語られてきた「お客さんに知ってほしい情報をファーストビューでちゃんと訴求する」ということとも合致します。
と同時に、少し斜に構えて見ると、「ファーストビューでの見せ方を変えてもそれほど意味は無く、重要なのはファーストビューで誘導した先の内容である」ということも言えるのではないか、と個人的には思うのです。少し飛躍した考えですが。
余談ながら、そもそもヒートマップツールの動画機能(弊社はClickTaleを使っているので)を見てみると、昨今のスマホ普及の影響か、ページの上部から順番に見ていくというよりも、むしろページ全体を把握するために一旦下までナメる、という行動が多く見られます。なので、実はスクロール率などはさほど意味が無いのではないかとも考えています。当然、ファーストビューはちゃんと見られるのですが。
そういったことを考慮しつつ、何が言いたいかというと?
ファーストビューは比較的ちゃんと「読む」という行為をしてくれる箇所だと思います。なので、ファーストビューの訴求は、そのままその後のユーザー行動に影響を及ぼす力が強い、というのはよく言われることでもあり、正だと思います。ただ、ファーストビューで「見せたいものを訴求する」「どういうページなのかを伝える」だけで良いのかというと、それは間違いなのではないか、ということも感じるのです。
ファーストビューで見せたテーマに対して、ユーザーはそれを補完する内容をページ内で探すことになります。なので、重要なのはむしろファーストビュー以上に同一ページ上での補完部分なのではないか、ということも一つ考えられるのではないか、ということです。
その他諸々、色々と見えてきたことはあるわけですが、この辺の事柄というのもABテストツールとヒートマップを組み合わせてみて分かることだなぁ、ということで。そんなこんなでウェブ分析上の最強の組み合わせだと思うのです。