DIGIDAY BRAND LEADERS 2018の個人的感想

DIGIDAY BRAND LEADERS 2018というイベントで京都に行ってきた。

前年2017年は福岡で開催されたそうだ。私は今回始めて参加させていただいた。ブランド(広告主)、パブリッシャー(メディア)、パートナー(ソリューションベンダー・広告代理店)の三者が一斉に介し、約100名程度の参加者が出席する。私はブランド側の人間としての参加だった。

なお今回は9月11日・12日の二日間に渡って、ウエスティン都ホテル京都という場所で行われた。いぇーい、京都だーーー!つって、勇んで参加させていただいた次第である。

登壇された方々の内容は、許諾などを取っていないので語れないし、参加された方々とオフラインで話した内容も詳述できない。けれどもこれだけはお伝えできる。すごく面白かった。

ここ数年、セミナーやカンファレンスは後日の営業電話がめんどくさかったり、そもそも面白いと思えるセッションが少なすぎて、とんと足を運ぶことがなくなった。そんな具合で斜に構えた私が、なにゆえそんなにも面白いと思えたのか?

■卓越のプレゼンターたち

セッション内容は大きく2つに分かれる。

  • ブランドサイドの人が語る実経験
  • ベンダーサイドの人が語るスポンサードセッション

この中でもやはり前者のセッションから得られるものはとても多く、自社に持ち帰って実践したいと思えるものばかりだった。

LOHACOさんのECマーケティングラボの話や、Japan Taxiの顧客・従業員の体験価値の話、ライオンさんのNONIOのコミュニケーション戦略、FiNCのテクノロジーを活かしつつも人間の根源欲求をくすぐる仕掛けの話など、どれももっと詳しく聞きたい!あわよくばそのノウハウを全て盗みたい!!と思えるものだった。

内容もさることながら、各プレゼンターの雄弁さもまた素晴らしかった。軽妙で聞きやすく、毒も交えながら緩急があり、聞いていて全然飽きない。

中でもシャープのTwitterの中の人のお話は印象的だった。プレゼンの締めの部分は、実は登壇の数日前に普通にTwitterに上がってたので、ご覧ください。

シャープさんから得るものが多かった理由

シャープさんのプレゼンテーションを咀嚼すると、彼のやっていることがとてもシンプルで、実は誰にでもできることだ思えたからだ。

  • 嘘をつかない
  • 真摯である
  • 中の「人」である

ということだけだ。投稿内容が面白い、というのは一側面にすぎず、実際にやっていることは素の自分で真摯に受け答えすること。嘘はバレる、ということで、素でやるのが一番正しいのだと言う。それはなんとなく理解しつつも、実際に実践することは難しいものです。しかしそれをやりきっているシャープさんの胆力たるや、いや、Twitterをやってきた中で鍛えられてきたのだろう信念のようなものには感銘を受けた。

実はこのカンファレンスには、他企業のTwitterのアカウントの中の人もいらっしゃっていた。その方に「シャープさんのすごいと思うところってどこだと思いますか?」と聞いてみたら、こんな答えが返ってきた。

「毎日大量に送られてくるリプライ全てに、簡単な言葉かもしれないけど、ちゃんとと返しているところ」と。

私はこれを聞いたときに、「あー、なるほど。」と思った次第だ。

ソーシャルメディアマーケティングでは、バズがどうとか、ネタがどうとか、そういう話になることが多い。けれども本質的には消費者とのコミュニケーションが最たるものであり、

ショートセッションの連続

また、今回のカンファレンスが面白いと思った点として、「時間の区切り」がある。

1セッションの時間が15〜20分に設定されており、短時間でサクサクと進んでいくスタイルだった。これは、つまらない話ならばすぐ終わるし、面白ければその後のネットワーキングの時間で詳しく話を聞けるので、聞き手としてとても効率が良いと感じた。このスタイルは、通常の無料のカンファレンスなどではできないものだとう。無料で大量に集まった、海の物とも山の物ともつかぬ有象無象を相手にするのは、登壇者からすると不毛というか、完全に搾取というものである。情報の搾取。これ、大問題ね、日本の。

そんなこんなで非常に有意義な時間を過ごせたと思う。

スポンサードセッションの方について

スポンサードセッションの方も割と面白かったんですが、Brightcoveの動画活用の話は特におもしろかった。正直、何年も前から「Brightcoveって、YouTube全盛時代にあって、なんで今もまだ生き残れてんの?需要あんの?」って思ってたんですよ、ごめんなさい・・・。

動画活用が、プロモーションにおいては配信するメディア別での管理効率化という面がありつつ、一方で社内教育などにも動画は有効に活用されているということ。動画の活用はもはやスタンダードな手法であって、よくある企業調査での「今の自社の課題は?」っていう設問の中に”動画活用”と”人材育成”が並ぶ事がそもそもおかしい。動画を使うことで人材育成という課題解決ができる、というあたりも結構目から鱗だったりした。

そんなこんなでBrightcoveの導入、再検討してみてもいいかな、って思ったんだけど名刺交換しなかったので個人タスクとしてはペンディングすることにしました。てか、今は無理ね。ちょっと。

■ストーリーテリング

さてはて、実はここからが本稿の主題です。前置きが長くなってしまった。大変だ。

今回のDIGIDAY BRAND LEADERS 2018にはテーマが設定されていました。

テーマは「ストーリテリング」。

つまり、広告主企業として、どのように消費者と向き合うのか、どのようにして商品の魅力を伝えればよいのか、という大きくも根源的な課題提起が行われた。

今や広告はそう簡単には届かない時代、らしい。
(個人的には「そうか?」って感じも実はしているし、そもそも面白い広告が減ったからじゃね?っていう気もしてるし、正直今だってリーチ広げたければTVCMやるのが一番手取り速いのも事実だし。まあそれは世代間ギャップなどもあるのだろう。)

けどまあ、そういう話というよりも、大前提としてウェブを使った動画広告がうんちゃらとか、SNSがどっちゃら、みたいな方法論の話ではなく、本質に立ち返ろうよ、という話だと私は理解している。それが「ストーリーテリング」という大きなテーマに設定された背景なのではなかろうか、と。

「ストーリーテリング」に対する個人的見解を2つほど。

今回、いろいろなお話を伺いつつディスカッションさせていただいた中で、個人的には本筋に出てこなかった部分で気になっていたことが2つほどあったので少し考えてみたい。

  1. 「ストーリーの受け手は誰か」問題
  2. 現在/過去/未来の問題

先に2のお話を。

ストーリーを紡ぐにあたって、時制がとても大事なので、一概に言えるものではない、ということを思っている。

結論を言ってしまうと、「現在」のストーリーに必要なのは「共感」であり、もう少し具体化すると「課題解決」に親しいものだと思う。抱える課題というのは、個々人の置かれている状況に依存するので、ターゲットを”主婦/主夫”とか”ビジネスマン”とか”非モテ大学生”とかのデモグラや、”痩せたい””お金ほしい””眠い・寝たい”みたいな願望だとか、そういうクラスタをしっかり設定して最大公約数を作る必要があるのだと思う。けどそれは正直非効率だし、極論「消費者個人のアイデンティティ」に迫るものになるのだと思う。これは企業の中の人が取り組むストーリーテリングとしてはシンドいと思った。

「過去」のストーリーについては、つまるところ「ノスタルジー」の喚起である程度の母数が取れるし楽である。ただ「懐かしい」の感情は現在の購買につながるかというと、結構シンドいことが多いと思う。だからマーケティングファネル的にはかなり浅い層だと思っていたりもする。

「未来」を語るのはとても難しい。要するに企業の姿勢に「共感」してもらうことが重要になる。今回のカンファレンスの中でもお話に上がったナイキのキャパニック起用広告についてはこの類なのだと思う。「ブランド」というものに直結する考え方であり、売上にも直結しやすい一方で「何を語るのか」という課題が常時つきまとう事になり、とてもむずかしいと思ったり。

そんなこんなで、ひとえに「ストーリーテリング」といっても、視点を明瞭にしておかないととんでもない間違いが起こったり、そもそも社内での意思疎通すら危うくなりかねない、という課題もあるのではなかろうか、という気がした。

ストーリーの受け手は誰か?

で、1の問題の方に戻る。「ストーリーテリング」という言葉だけで捉えたとき、実は「企業と消費者のコミュニケーション」の話もさることながら、個人的には”社内でのストーリーテリングも重要だよな”ということも思っていた。言い換えると「社内説得」という言葉になるかもしれない。

マーケティング活動の中でぶち当たる壁の1つに、商品の「機能」を訴求すべきか、「共感」を誘うプロモーションを行うべきか、というせめぎ合いが発生する。

機能価値vs共感価値

機能価値とはすなわち、ダイソンで言うところの「吸引力が変わらないただ1つの掃除機」みたいな話であり、差別化要素が明確であれば伝えやすいものではある。そして指標化することが容易なものだったりする。

一方で共感価値でのコミュニケーションは難しい。指標化、つまり効果が数字に表れづらいという難点がある。

機能価値はどちらかと言うと、「現在」軸における課題解決を語るには手っ取り早い。だから、売上を上げたい営業部としてはこのコミュニケーションを優先したがる傾向がある。同時に商品開発部隊としても、技術力に自信があればこの方法を取りたがる傾向にあると個人的には想像している。

けれどもマーケティングに従事する人たちは肌感として、共感価値を生じさせるほうが消費者に伝わるし、付随して売上も向上するはずである、という思いを共有している。じゃあその共感価値を「ストーリーテリング」するにはどうしたらよいか、という時に重要になるのが社内説得、社内コミュニケーションであり社内的なストーリーテリングであったりする。

今回のカンファレンスの中で実は一番モヤモヤしていたのが、このあたりだった。ストーリーを消費者に語るには、その前提となる予算承認や決裁に差し当たってのストーリーが必要だということ。「ブランド価値」というものが社内で有益と共通理解されている会社であれば良いが、実際それを文化化できている会社ばかりではない、という根本課題の解決に際しても何かしらのヒントがあればなと思ったり。

そんなこんなを考えた二日間だった。

もう文章長くなりすぎてて飽きてきたから、そろそろ締めます。

■余談

締めると言っておきながら、脈絡がないので書かずに置こうと思ったけどやっぱ書いてもいいかな、って思ったんで余談をちょっと書く。個人的に最近はこんなことを思っている。

  • 女性をターゲットにしたければ、男性をネタしろ。
  • 子育て中の母親をターゲットにしたければ、夫をネタにすべき。
  • 子供をターゲットにしたければ母親を狙え。

ストーリーへの共感は難しい。こと企業からの発信に共感するというのは、ことさら難しい。共感という感情はむしろ個と個の結びつきから派生するものだと思っている。なので、本当に共感を呼びたければ、ターゲットから一歩だけずらして、「①企業→②非ターゲット→③本当のターゲット」というコミュニケーションの流れを作るのが良いのではないか。このフローの場合②の箇所で咀嚼・解釈が発生する。②と③の関係性は個と個である。③にとって受け入れやすい状態になって届く。そんな感じ。

①→③ならばやはりSDGsが鍵を握っているというのも思うところ。

そんなこんなです。

■最後に

なんか、やたらと長文を書いてしまった。

ということで、本稿に見返りはない。ただ備忘として書き連ねた結果、こんな長文になってしまった。社会人、時間の無駄遣い・・・。

と思っていたところで、「あ、そっか。じゃあもうこれはアフィリエイトやっちゃおう」と思い立ったわけで、ちょうどよくオススメできる超良書があったことを思い出した。それがこちら↓

そう、名著『ストーリーとしての競争戦略』。

これは本当に面白い経営書である。一読して損はない。保証する。返金はしないけれど。けどせっかくだから、このアフィリエイトリンクから買って読んでみようよ。絶対おもしろいから。

ってことで、ささやかな還元を薄給の会社員たる私に。

以上。