完全にヤラれた!!っていう話を一つ。
まずはこちらの動画をご覧ください。
何の話やねん!てね。ツッコミ入れつつも、る鹿ちゃんかわいいなー、つって最後までみたら、企業の商品プロモーション動画なわけですよ。
「重ねドルチェ!!!!!」
いやー、もう、いろんな面で完璧っす。ここ数年の潮流を完全に読み切って、全てキッチリやりきったこのプランナーに心の底から脱帽。
ということで、いろんな点から、何に「上手いなー」って思ったかをツラツラしてみようと思います。
【話題にしやすさ】
言うまでもなく、「合コンテクニック」というツッコミやすさ。「女こえぇー」とか「あざとい!」とか言っちゃうアホな男がネタに取り上げること予見し易く、SNS拡散のベースがまずしっかりしてる。
てか、まぁ、そこはどうでもいい。よく言われてる話だから。
【出演者:る鹿】
る鹿の投入はもうベストタイミングだと思う。若い女性にはモデルとしての認知があるのだろうけれど、世の中的にはまだまだ認知されていない。今のタイミングであれば、ギャラもそこまで高くなく、かつ、る鹿にも大きなメリットがあるWin-Winな配役だったと思う。
水原希子のような圧倒的小悪魔感。例えばこれが吉岡里帆では健全過ぎて成立しないというか、このプロモーション動画を見た男性に「絶望感」すら感じさせる結果になるわけで、そういった意味でも、る鹿ははまり役だったと思う。
また、「この子、どっかで見たことあるな?」と思った人も結構いるのではなかろうか。多分、↓のMVで見たのでは?
ということで、人気絶頂のサカナクションのMVに出て半年経過しての今回の「カサネテク」出演ということで、多分今回のブッキングの元はサカナクションだったのかな、と思ったり。
【制作費】
ということで、る鹿のドハマリっぷりはありつつ、おそらく出演料的にも高騰する前だと思われるので、制作費はかなり抑えられているんじゃないだろうか。セットや照明、映像の出来栄えなどを見ても、かなり低予算だったと思われる。
つまり何が言いたいって言うと、CM作ってマスプロモーションをかけるではなく、ウェブ動画のROIがものすごく良い、ってとこを明確にできる素晴らしい事例だということ。実制作費は知らないけど。
【踊り:elevenplay】
MIKIKO主催のelevenplayのメンバーが振り付けを担当。「恋」ダンスの大ヒット以降(それ以前からもダンスを取り入れたCMやMVはたくさんあったが。)の、意味もなく踊りを入れてみれば人気になるんじゃないか?というメディア(テレビ局)の思考停止を嘲笑うかのように、今回はちゃんと、踊りに意味性が付加されている。古来より踊りには意味があるのだ。意味が必要なのだ。人気取りのために存在するものではないのだ。そして今回のカサネテクのダンスは、「重ねる」というキーワードをしっかりと体現させているがゆえに素晴らしいのだ。
意味のあるダンスを取り込んだ動画プロモーション。まさにプロモーションとしての王道をぶち抜いた痛快っぷりだと思う。
【音楽】
裏で元相対性理論・真部脩一が絡んでるんじゃないか、って感じの性格の悪さである。狙ってやったのかたまたまそうなってしまったのかは分からないが、超絶ファインプレーなことは確か。
※作詞作曲、判明しまして。
作曲→https://phabcommasters.bandcamp.com/
作詞→Facebook見た感じ、電通のプランナーさんかな。
「チープなサウンドに印象的な歌詞」
つまり、ピコ太郎である。2016年の動画の王者、PPAPの手法である。まぁ、ピコ太郎は80sテクノをベースにしている一方で、今回はむしろこの10年での日本の脱力サウンドを基に作られている点が面白い。
歌詞を書いたのが誰かは定かではない(多分CMプランナーだと思う。)のだが、言うなれば「中田ヤスタカ的手法」。むかし、Perfumeの“シークレットシークレット”の歌詞を読んだ以前の彼女に、「こんな歌詞、女の子が書くわけ無いじゃん笑」って言われたことを思い出したのは与太話ですが。もしくは「相対性理論的手法」とも言える。
脱力系のサウンドでミニマルになりすぎず、しかし下品ではない音の「重ね」具合っていう、商品そのものをキッチリ音数でも表してる点も然ることながら。
急な転調ゴリゴリのこの構成って、でんぱ組.inc。にも代表される系統のアイドルソングであったり、ボーカロイド使った系の音で、ウェブと親和性高いラインにおいてある。
音楽ソフトのプリセット音ばっかでポップだけど仰々しくないチープさ。そこに中村千尋たるシンガーソングライターの絶妙にクリアな歌声を重ねたことで、ちゃんと音楽として聴くに耐えるものになっていることも賞賛しかないわけで。
最近で言えば、水曜日のカンパネラみたいなルーズなラップに、ピコ太郎的チープトラックに、アイドル楽曲風の突飛な構成、なのに歌声はとてもクリアでキュートっていう、ここ10年くらいの売れ筋をコラージュしていった結果、もはや20年前遡ってのチボ・マットすら想起させるセンス、もしくは最近で言えばtofubeats並のクレバーさなんじゃないかと。
で、歌詞ね。歌詞。この女子の悪巧み的なネタっぷり。カワイイ声の女の子にほんの少しの毒を盛った歌詞を歌わせることにかけては右に出るものはいない、真部脩一並の性格の悪さというか遊び心なわけである。そう、これはもはや真部脩一在籍時の相対性理論なのではなかろうか、というぐらい熱い!!
ということで、アーティスト性を排して、完全に企業の商品プロモーション用クオリティにとどめている点が圧倒的に好感を持てるポイントでもある。直近の悪例である、LINEモバイルのCMでのキリンジ“エイリアンズ”使用のような、プランナーのエゴイズムは商品プロモーションにはいらないのだ。
そんなこんなを書いてみて、他にもいろんな要素があるんだけど、一旦ストップしようと思います。他にも、デジタルマーケティング的なディストリビューションの話とかをしないと、このサイトで取り上げる意味ないし。
だがしかし、文章が長い。疲れた。甘いものが欲しい。
ということで、「重ねドルチェ」買ってくるよ。