デジタルマーケティングの構成要素-その1 : 集客について

ひとえに「デジタルマーケティング」といっても、大きく4つの要素で構成されている、と個人的には思っている。この4つの要素をどう組み合わせるか、というのがデジタルマーケティングの肝だったりする一方で、この4つの要素のどこに専門性を置くかによってマーケターとしてのキャリアの積み方が変わってくるのだと思う。4つの要素というのが、下記のものになる。

  1. 集客
  2. コンテンツ
  3. データ
  4. システム

以下、それぞれに対する説明と見解をまとめてみる。

1. 集客

「集客」と一言で表しても、実際はデジタルアド、Search Engineからの自然流入、チャネルとしてのSocial Mediaや記事広告なども含めて多様に広がるものだというのは、広く知られていることだろう。ある程度、予算がものをいう世界でもあるので、正直言うとこの分野に特化した人材にはさほど価値は無い、と個人的には思っている。

デジタルアドの人材について

リスティング広告や各種広告メニューに関しては、機械学習を用いた自動最適化の流れは進んでいる。まだまだ不十分というか、微妙な点も残されているが。なので、正直Paid Mediaの最適化に際しての人的リソースの価値というのは相対的に今後どんどん下がっていくことになる。もう少し的確な言葉を選ぶと、例えば「GoogleのAIが最適化した結果こうなりました」とか言っちゃう広告運用者は不要人材である。君が介在する意味ってなんやねん、と。ポートフォリオ型の自動最適化エンジンに任せれば良い。

一方で多くのデジタル広告担当者に足りていないスキルが多数かつ明確にある。それはデータベースの設計の能力であり、データ分析の能力だと思う。

データベースの設計をしたことがある、もしくは一定の理解がある人間からすると、GoogleやDSPなどの機械学習のモデルに対して、欠落が必ず存在することは容易に想像できる。たかが2-3日程度のデータで自動最適化が走ることに対して、そのデータがいかに信頼性に駆けるものなのか、ということは、データをしっかりと分析したことがある人はすぐ気づくことだろう。また、DBの設計や機械学習のモデルを組んだことがある人ならば、自動最適化に際して必要なデータの種類やそもそものフラグ付けがいかに重要かという一方で、それが取得できないものであることに気づくことも容易だろう。

そう考えていったときに、最適な広告配信プランを考えるのであれば、デジタルアドの担当者にはデータに関する知見が必要であり、それを備えない限り今後付加価値は上がらないし、給料も上がらない、ということは容易に想像がつくのではないだろうか。

SEO担当者について

SEOについても同様に、設計の観点でいうとある程度標準化されているので、今後その市場価値については下がらざるを得ないという印象を受けている。これも正直言うと、DBの設計と一定の統計分析に関する知見があると、ある程度Googleのアルゴリズムに対するイメージはつけられる。

言語の解釈方法については自然言語処理についてある程度携わっていればイメージがつくだろうし、Googleが取得可能なデータの種類はアクセス解析に精通した人間なら分かる。リーガルやコンプライアンスの知識があれば、何が教師データとして利用可能なのかということも分かる。これだけわかれば、後はアルゴリズムの可用性について思いを巡らせ、DBを構築するにあたって何重にもレイヤーが形成されていないと実現不可能な事象も分かるだろうし、その中間データがどのように別のソリューションに転用されているかも分かる。その程度のこともわからない、想像がつかないというのであれば、もう一回大学でしっかり学びなおしてくると良いと思う。

そう考えていくと、これまたSEO担当者という概念は消えていってもおかしくない、と言えるだろう。ある程度ロジカルな思考ができれば、何をすべきかというのは割と明確だ。

Social MediaやPR記事

SNSからの見込み流入を計算することは難しい。SNSでの拡散とClickの関係性を意図的に導きたいのであれば、「拡散装置をどこに作るのか」と「炎上しないレベルでギリギリ議論を呼び込む」ための設計をしなくてはいけない。そのギリギリのラインというのは、大企業においてはたいてい実施不可能と判断される領域にある。それはPaid PRにも適用されるし、Organic Public Relationsを築けていたとしても、その過程でくじけることが多い。

そういうことを考えていくと、結局

集客に関してはぶっちゃけAIで代替できることが大半だろう。なので、この分野でキャリアを積んでいくことに対してはあまり期待すべきではないと思う。

ただある程度考慮が必要な点もある。Channelによってその評価価値が異なるので、TVCMも含めたマルチチャネルで物事で考えた場合は「意図」や「係数」、加えて「社会性」を捉えた上での配分を検討することは必要である。また同時に、数字では決定できない「戦略的意思」が介在した場合には、AIで算出できない結論が存在するだろう。そう考えていくと、ある程度「ポートフォリオをどう組むか」という言葉の意味合い的にも財務や経営戦略に関する知見があると有利に働くのではないだろうか。

ただし、一広告担当者がそのキャリアに転じることは非常に難しい話だったりはする。となると、意外と門戸は狭いが、新規事業の立ち上げに際して「集客全般」、特にNon-Paidで集客するような手法に対する知見を深めておくほうが個人的には有益なのではなかろうか、という気がしたりする。同時に、「戦略的なロジカル思考」を明確に持てるかどうか、という点も重要ではなかろうか。

4つあるうちの1つ目で割と文字量が多くなってしまったので2番目以降は別記事として展開しようと思います。